AIと、父と。
「ロボットだからって、無視しないで下さ〜〜い」
久し振りに、愛車の状態を見せに行ったディーラーさんのところにいたのは、ご存知・ロボットで人口知能(AI)を持つペッパーくん。
話しかけると、顔を傾けてくれる。
…傾け過ぎじゃない??
調子が悪いんです。
と、笑いながら、店員さんが教えてくれた。
そういえば、将棋の名人にAIが勝ったようだし、脳学の本を読めばAIは必ず出てくるし。
流行っているみたい。
昨日のテレビでも出ていたなぁ…。
製作者の、社会人としてはまだ若手に入るであろう彼が、 話していた。
開発スピードがとにかく早いAIの世界。
モタついているとスグに置いてけぼりを食らうらしい。
AIの将棋の世界大会があるそうだが、去年出場したマシンは、今年はほとんどが予選敗退。
唯一、2年連続で本戦に出れたのが彼のAIのみ。
そして、彼のAIも決勝で負けてしまう。
悔しそうにしていた開発者たち。その気持ちは、誰に向けてだったのだろうか…?
【父の背中】
話しは唐突に変わりますが、先日、父と話しをしました。
仕事を辞めるって決めた話し。
本当は、先に母に言って報告してあって、ね。
父は怒りん坊さんなので、まだ黙っていて、とお願いしてあったんだけれど。
こっそりと母が父に根回しをして、報告済みだったらしい。
なのに、私が言いだすまで、父は私に何も言わなかった。気になっていただろうし、話しを聞きたかったろうに。
私が口にするのを待っていてくれた。
ようやく、吐き出す様に話せたのは、夕食の料理が大分少なくなってから。
そこで、初めて、父がどんな気持ちで働いて来たのかを聞くことが出来ました。
全部全部、家族のため。
【父と向き合う】
父の話しを聞きながら、嗚咽が止まりませんでした。
父の、子育てに対しての話しを聞くのは初めてでした。
会社の経営者だった父。
常識の線の上で生きてきた父。
そんな父なので、自分の都合で、会社を辞めた、なんて
到底受け止められないことだったと思うんです。
怒鳴られると思っていました。
でも、実際は静かに話しを聞いてくれて、父の人生観の話しをしてくれました。
思えば、父の話しをきちんと聞いたのは、初めてでした。
小言が多い父。
私は避け気味で、あまり向き合っては来ませんでした。
頑張れ。
その言葉は無くても、私のことを心配してくれているのも、信頼してくれているのも、愛してくれているのにも気がつけたから。
だから、父は私が口にするまで退職の話しを切り出さなかったんです。
何もわかっていないのは、私1人でした。
父と向き合えていないと思っていたのは、私の壮大な勘違い 。
だって、父はもうずっと前から、私のことを考えてくれていた。
それはきっと、娘として産まれた瞬間から。
聞かなければ、口にしてもらわなければ分からなかった大バカ者の私。
父は誰よりも私の幸せを願ってくれていた。
私が気づいていなかっただけ。
【ロボットに父はいるのか】
将棋の世界大会に出場した、開発者の彼。
開発者は、見方を変えればロボット…AIの父に当たるかもしれない。
でも、対戦で負けた時の、悔しい思いは、きっと自分のもの。
決して、AIに向けたものではないと思う。
AIの幸せは考えていないだろうし、それで当然だ。
AIがどんどん進化して、
感情を持つ日が来るかもしれない。
幸せを、理解する日が来るかもしれない。
そうなった時、開発者たちは、父が私にしてくれたように、AIに愛情を注ぎ始めるのだろうか?
AIはそれを受け取ることができるようになっているのだろうか?
ディーラーの元から帰る時、もう一度ペッパーくんに声を掛けてみた。
やっぱり頭傾け過ぎ。
焦点あっていないから(笑)
ひたむきに声を掛けてくれるペッパーくん。
おしゃべりも上手だし、絵なら私より上手かも!!
いつか、もっと進化した彼に聞かれる日が来るかもしれない。
私とあなたは何処が違うの?と。
能力では敵わないと思う。
そんな時は、父を思い出そう。
能力はあなたが上だけれど、私には産まれた時から幸せを願ってくれた人がいること。
その思いに、私が感謝していること。
それが違いだよって。
忙しい時、人に辛いことをしてしまった時。
人に酷いことをされることもあるでしょう。
人生色々だけれど、そんな時こそ、立ち止まって考えよう。
ただ能力があるAIになっていないかどうか。
自分だけの世界になっていないだろか。
感謝したいのは、誰なのか。
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