ありがとうに触れるか?
一年ぶりに大好きなメンバーで集まった夜のこと。
久しぶりなので、少しいいお店の半個室を選んだ。
お料理はとても丁寧に作られていて、味も見た目も満足した私たちの気分は最高潮。
久しぶりに会った私たちの話はつきなくて、あっという間に時間が過ぎていく。
箸もお酒もゆっくり進むペースになってきて、そろそろ、という時間が近づいた時、友達の一人が面白いことを口にした。
『この前、あまりに幸せすぎて、夜中に目が覚めて寝れなかったの』
突然の発言に目を丸くする私たち。
『何かがあったわけではないのだけれど。例えば、目の前にあるこのコップ。すごく丁寧に作られていると思う。私の手元に来るまでにどれだけ手間暇がかけられて、ここで出会えたのか。色々な人の思いが入っているよね。だからありがとうと思ったら、嬉しくなってしまって』
彼女の言葉が私の何かを射抜いた。
『ありがとう』という言葉が素晴らしいということは色々な人が言っている。
辛い時は言葉だけでいいから『ありがとう』と言てみたらいいよ。言霊だからとよく言われる。
もちろん、そのことを否定するつもりもないし、その通りだと思う。
しかし、本当の感謝とは、脳で考えるものではなく、五感で感じるものではないだろうか?
舌で、耳で、指で、目で、鼻であるいはそれ以外の感覚で
目の前の彼女はコップを触りながら、間違いなく、触覚でありがとうを感じ取っていた。
人に優しい言葉をかけてもらったとき、涙が出たことがある。それも何度も。
あれは今思うと、聴覚が優しさに触れたのだと思う。
考えたもの(脳)ではなくて反射(五感)で感じたのだと思う。
ありがとうに触れるか?脳が反応するよりも先に感じ取れるか?
ありがとうでなくてもいい。このグラスから、あなたは何を感じ取りますか?
私は、そういうことが書けるライターになりたいと思ったある夜のことでした。
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